概日リズム睡眠障害 アナタの生体時計は狂っていませんか? 通常、私たちの身体は日中に活動し、夜間には睡眠をとるようにプログラムされています。この睡眠時間帯を決定しているのが、“体内時計”と言われる特別な時計=“生体時計”です。しかし、現代のビジネスマンには夜間に活動する人、昼夜不規則に活動する人など労働時間が変則的な人が増えています。このため、生体時計が正常に働かなかったり、たとえ正常に働いたとしても、それが自分の眠りたい時間と合わなかったりして、不都合な時間帯に眠気がおそってくるようになります。これが概日リズム睡眠障害です。 概日リズム睡眠障害には、具体的に次のような種類があります。 1) 睡眠相後退症候群 睡眠相後退症候群とは、望ましい時刻に入眠、覚醒することができず、慢性的に睡眠時間が遅れてしまう病気です。早く眠ろうと床についても、なかなか眠れず、明け方になってようやく眠ることができ、目覚めるのは昼頃、といった症状が続きます。この病気は、決して怠け者のせいではなく、目覚まし時計を何個もセットし、家族に起こしてもらってもなかなか起床できません。また、無理やり起床しても、午前中はひどい眠気や集中力の低下、倦怠感などにより社会生活に支障を来します。ただし、こうした症状は、午後になると全く消えてしまいます。
以下のような状態の持続が確認されれば、本症が疑われます。 1、 望ましい時刻に入眠、覚醒することができない。 2、 睡眠時間帯が望ましい時刻に比べ2時間以上遅れている状態が少なくとも1カ月以上も続いている。 3、 時間的な制限がない時には、その睡眠の質と持続時間は正常であり、自然に覚醒できる。 2)時差症候群 時差症候群とは、いわゆる“時差ぼけ”のことで、生体リズムを現地時刻に合わせようとする過程で、不眠、日中の眠気、身体の不調などの症状が生じる病態です。 時差症状の程度は、飛行の条件(特に飛行方向)、年齢、性格などにより異なります。一般に、日本からヨーロッパ方面に向かう西方飛行より米国方面に向かう東方飛行の方が症状が重くなります。これは生体リズムを前進させるのか(眠気がないうちに眠る)、あるいは後退させるのか(眠気を我慢して夜更かしする)、という違いによるもので、通常は、生体リズムを後退させる方が容易とされています。米国方面の飛行では、生体リズムを前進させなくてはならないため、時差症状が強く現われると考えられます。 3)交代勤務睡眠障害 最近は、夜間勤務や交代勤務者が急増していますが、それらの80%近くが睡眠障害やめまいなどの自律神経症状、吐き気・下痢といった消化器症状を訴えています。 交代勤務睡眠障害により、勤務中の居眠り、全身倦怠感、不眠、仕事上のミス、家族とのコミュニケーションの欠如など、さまざまな弊害が生じます。 勤務パターンにより対処の方法は異なりますが、一般に夜勤が連続2日以内の場合は、本来の生体リズムを維持するようにします。 「日勤→準夜勤→深夜勤」というように、1日が長くなる方向でのローテーション設定をすることで負担が少なくなります。 こうした睡眠障害の治療には、大きく分けて薬物療法と非薬物療法があります。臨床的には、まず、睡眠薬などで不眠の症状をある程度軽くしてから、非薬物療法で薬剤の減量、中止に持っていくか、最初に簡単な非薬物療法を行って薬物療法の効果を上げるという2通りの方法があると考えればよいでしょう。 |